頭や首に感じるくすぐったい感覚のこと。特に囁き声やブラッシングの音を聞いたりした時に感じる。(Cambridge Dictionary ASMR)
別に刺激は音に限らないのですが、ここでは主に音さらに具体的にバイノーラル録音を利用して、上記の感覚を探るものををASMRと呼びます。
蓄音機を発明した時、エジソンさえ忘れていたようであるが、その4年後には人々は人間の耳が左右に計2つある事を思い出した。ステレオ録音である。左右に別れたマイク・スピーカーによって、位相差と音量差をつくりだすステレオ技術は、wikipediaによるとバイノーラル録音が先だったらしい。近年になってポピュラーになりつつあるバイノーラル録音は、実は古い言葉なのである。
1984年のマイク付きステレオヘッドフォンの広告(外部リンク)原理は単純で、人間の両耳の中にマイクを設置して録音、再生もイヤホンやヘッドフォンで行えば、まさに聞いたままの音声を伝えることができる。前述のように古くからある技術であるが、つい最近まで応用先が皆無であったため、普及は殆どしなかった。
ところがYouTube等で気軽に動画投稿が可能になった折、ASMRという刺激を得るためにバイノーラル録音を利用することがメジャーになり、ここに、バイノーラル技術が日の目を見るにいたったのである。
バイノーラル録音のためのマイクはその歴史的な背景から、主に業務用(輸送機器内部での騒音の測定など)や、実験用がターゲットであった。このような利用方法では、人間の耳に装着するタイプでは面倒であるため、人間の頭部と耳の構造を模したバイノーラルマイク(ダミーヘッド)が使われてきた。
しかしこれ、業務用らしく非常に高価である。 Amazonのリンク
YouTubeでメジャージャンルになり、収益化も可能になったからこそ、バイノーラルマイクの用途外利用もフツーな感じになってきており、安価なマイクも登場しているが、一般的なマイクと比べても、初期投資としては大きすぎるの現状である。
ところで、バイノーラル録音は、音源とマイクの位置によって音の位相や音量、周波数特性が変化するフィルターと考えることが出来る。これをHRTF(Head Related Transfer Function, 頭部伝達関数)と呼び(詳しいモデルは知りません。ごめんね)、様々な人間の頭部やダミーヘッドのHRTFが測定、公開されている。これを適用して音声を加工すれば擬似的にバイノーラル録音が実現できるのではないか。
ソフトウェアによるバイノーラル音声の再現はコンピュータゲームで生かされている。例えば、FPS等にヘッドフォン音声モードが搭載されている場合がある。擬似的なバイノーラル音声によってゲーム中の足音や銃声といった効果音が発生した位置をより正確に知ることが出来る。
それ用のライブラリが公開されている。 Steam Audioだ(リンク)。特にUnityと利用することで簡単に3Dゲームの音声をバイノーラル化することが可能である。今回の制作は、このライブラリがあったからこそ実現できた。訳のわからない音声処理をしなくて良くなったのである。
もはや破壊的イノベーションの要件を満たしている(ついでに、既存製品よりも性能が劣っていることもぴったりである、後述)
ついでに、製品の機能として、物理マイクが出来ること=マイクに直接触れた時の音を録音出来無いという制約がある。よって、顧客層必然的に、まだマイクを購入していないASMR動画投稿初心者や、表現の幅を手軽に広げたいと考える動画投稿者である。マケティング分析的には、
前述の通り、Unity + SteamAudioという組み合わせで制作した。必然的にファイル操作が必要になるため、その処理をUnityStandaloneFileBrowserに丸投げした。録音周りもAudioListner2wavに投げた。ダミーヘッドを前に自分がぐるぐる回る(あるいは、ダミーヘッドをぐるぐる回す)ような3Dでの直感的な動作が売りである。ダミーヘッドとしては、ローポリUnityちゃんをテクスチャ抜きで使用した。(ついでに影も事前処理で、できるだけ軽量化。誰もが皆高性能なPCを持っているわけではないのだ。(あれ?セグフォが出て落ちるぞ?)
SteamAudioデフォルトのHRTFでは臨場感が足りないと感じたため(これは個人の耳との相性である)どこか(忘れた)の大学が公開していた研究用のダミーヘッドの一番近距離のHRTFを使用した。(確かKU-100。実質、100万円の価値があるのでは!?)
UIは、レトロ趣味全開のTUI(Text User Interface)風。ほら、電車の運行管理システムの表示板みたいなやつ。あるいはDOSアプリとかの、文字でありながらグラフィカルなUI。(さっき4Pとか言っておきながら、明らかにターゲットの顧客層の好みを無視していることは内緒だ)
作って投げっぱなしではなくて、ちゃんと配布ページも作ったし、YouTubeとニコニコに紹介動画を投稿した。ニコニコの方では最初だけ広告(&ツイート)を頂いたが、ダウンロード数は鳴かず飛ばずである。まあ、無名なチャンネルで宣伝しても意味はない。これを使ったASMR動画を大量に投稿したり、動画投稿者への売り込みをしたりすれば良いとはわかっているが・・・
見ての通り、既成品を組み上げただけである。Unity初心者すぎてソースもぐちゃぐちゃで多分もう保守できない。本音を言えば、コンセプトとしてはかなり良い線いっていると思うので、「誰か」やる気のある人が本気で作って・本気で売って・本気で宣伝して欲しいなー。